初恋の王子さまな第5話

 「そう、ぐずぐずなさるなんて、じれったいわ。もうよそへいくことにおきめになったんだから、いっておしまいなさい、さっさと!」
 花がそういったのは、泣いている顔を、王子さまに見せたくなかったからでした。それほど弱みを見せるのがきらいな花でした。
(P.52)
サン=テグジュペリ・作 内藤 濯・訳 『星の王子さま』

 弱みを見せまくりの井汲さんでした(笑)
 ふみちゃんと杉本先輩(および、ふみちゃんとあーちゃんの)電話にて会話するシーンにおいての、話者のカットがくるくる変わるとこが、……うざーい(笑) 『24』とかじゃないんですから。静のシーンなのに、こういう無駄な運動はいらないですよ。
 ま、なんだかんだ言いましても、背景がついているというのは、見ていてうれしいですよね。舞台の練習シーンとか。
 原作の<私のは たぶんそれなのだ 生まれてはじめての恋だったから 私はいつまでもそれにとらわれてしまう >*1がなかったのは、これも最後の方にもっていくからなのでしょうか。話の締め方が、予想通りになりそう*2
 
 みんなみんな、初恋の相手に気持を囚われたままで、届かぬ思いに身を焦がしている。生まれて初めて大切にした、一輪の花。でも、その桎梏から自由になって初めて、せかいにはもっと花が溢れていることを知るのです。

 「ぼくは、この世に、たった一つという、めずらしい花を持ってるつもりだった。ところが、じつは、当たり前のバラの花を、一つ持ってるきりだった。(…以下略…)」
(P.92)
サン=テグジュペリ・作 内藤 濯・訳 『星の王子さま』

 でも、それでも心に残り続ける、あの一輪の花。あのバラの花が、この世に咲き乱れているそれらの花たちと違って、心の残滓としていつまでもこびりついてなくならないのは何故? 甘く、そしてほろ苦い感情を残す、その思い出として。

 「あんたたちは美しいけど、ただ咲いているだけなんだね。あんたたちのためには、死ぬ気になんかなれないよ。(…中略…)だけど、あの一輪の花が、ぼくには、あんたたちみんなよりも、たいせつなんだ。だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。覆いガラスもかけてやったんだからね。風にあたらないようにしてやったんだからね。(…中略…)不平もきいてやったし、じまん話もきいてやったし、だまっているならいるで、時には、どうしたのだろうと、きき耳をたててやった花なんだからね。ぼくのものになった花なんだからね。」
(P.102)
サン=テグジュペリ・作 内藤 濯・訳 『星の王子さま』

*1:志村貴子『青い花』第1巻 P.P.180-181

*2:というか、普通に考えたらこうなりますよね。別荘の話はともかく。