モン・スール (Seed!comics)

モン・スール (Seed!comics)


まさに、「ヤマアラシのジレンマ」
それまではお互いが適度な距離をとりあいつつうまくやれていたのが、
ボタンの掛け違いのように、ふとした弾みで崩れてしまった関係。
再び元に戻ろうと、お互い見せていなかった本音を晒し合う。
しかし元に戻ろうと近づけば近づくほど、互いの針で傷つけあってしまう。
そうまでしても、取り戻したい何かがそこにあった…のか。


以下ネタバレ気味、感想↓
池内(兄のこと)は失踪した父親を見限って、美波(妹)を自分が守ろうとする。しかし守ろうとする行為は、守られるもののすべてを自分の手の中に収めていると思うし、そうしなければ気がすまなくなってくる。無意識のうちに。
善意で始まった行為が、いつのまにか思い込みへと変貌していったことを、妹の告白によって、<ここにいるのは 妹じゃない  ここいいる『女』はだれだ?>と気づかされ、<妹>の美波という存在は実は美波という<人間>でしかないことを無理やり認識させられるこの場面は、とてつもなく、痛い。

P93の、美波の「ホントはガマンなんかしたくないけど ワガママ言ってもみんなが困るだけだし これで ウチがうまくいくんなら  平気だと思ってた ずっと 」と言ったあとの、みんながうつむいて、外には蝉の鳴く声しか聞こえない場面。
告白という名の針でお互いを傷つけあい、それでも、もうそれを止めることも後戻りすることもできないところまで来てしまった重さが、読んでいる自分の胸にもずしりとのしかかった。←ここまで。


美波の年齢設定は10歳じゃ厳しいと思う。12歳ぐらいじゃないかと…(まあ、ある意味どっちでも厳しいが)。


前知識なしに、インスピレーションで買ってみたのだが、よかった。
エロマンガじゃなくて安心。
以前、店頭で気になってokamaの「めぐりくるはる」を購入したとき、
家に帰って読んだら、「別にエロ要素はいらんのだが…」とちょっとがっくり
きたことがあったんで。


作者のことを調べたら、今かなり大変なようだ。
ヨイコノミライ」は完結できなくて、残念そうだし。


同時購入した「氷が溶けて血に変わるまで」もよかったから、もうちょっと他作品を読んでみることにした。


氷が溶けて血に変わるまで (Seed!comics)

氷が溶けて血に変わるまで (Seed!comics)