法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)

法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)


なかなか面白かった。とくにすきなのは、「はかりごと」「動機」「偽患者の経歴」。
ひとつの事実に対して、視点を変えることによって真実の違った側面がみえてくるアクロバティックな展開が好み。全部読み終わって、各話の題名をみたら、即座に思い出せるのが3割くらいだった。記憶力低下したか。それともいま風邪でアタマがボーっとしているからか。

中西智明のようなネタって、もしかしたら似たようなのが米にも英にも仏にもその他の国々にもあるんだろうね。でも原語でないと面白さが減ってしまうこういったものは、訳されることなくその国でのみ消化されるのだろうか(ちょいネタバレ)。
あと、「問題編終わり」とかやられるとせっかく作品世界に浸っていたのに、興をそがれるというか。本格バリバリの人は、作者からのフェアなゲームを期待しているのだからむしろいいのだろうけど、普通の本読みとしては「べつに小説読んでるんで、クイズ見てるのではないのにな…」と少し思ってしまう。まあ、たんなる好みの問題。「本格ミステリ・アンソロジー」とあるし、こっちのほうが少数意見かな。作品自体は好きだということが前提での話し。
ちがうちがう。あれは推理の余計な枝葉をきっていって、それでも「こういう方法があるんだよ。その証拠に……」という見せ方ではないか。パズラーは、その鮮やかさに惚れ惚れするのだ。やっぱり、風邪をひいてると頭が働かないな。
たしかに、この作者の技量なら「消失!」を読んでみたくなる。

邦モノは、舞台設定や動機が洋モノに比べるとなんだか地味な印象(是非の問題ということではなくて)。ちょっといじったら2時間ドラマでいけるのではないか、というか。ただそう思っただけ(外国が舞台だと異世界に見えるという錯覚も多分にあり)。