意味があるのか!?ないのか!?

鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

「きっとあんただって気づいておられるじゃろうが、この世界は断片だけからなりたっている。そして、どの断片もほかの断片とはもう関係がなくなっている。(…中略…)あらゆるものとものをもう一度結びつけるあの言葉が見つからなかったら、そのうち世界はすっかり粉々になってしまうじゃろう。だからわしらは旅をつづけて、言葉をさがしておるんじゃ」
一編が数ページから十数ページの話が集まった短編集。話というよりも、1シチュエーションにおいての不可思議で奇妙な出来事、人物の描写に筆を走らせている。イメージの飛躍を楽しむものなのか。ひとつの話が急に始まり、ええっもう終わるの!?という感じで読者はその話から退場させられ、次の話となる舞台へとせきたてられる。現代音楽のように調性がなく、どこが山場でどこが安定なのよくわからない、まるで不安定な足場に立たされている気分になる小曲品集を聴かされているみたいだ。ただ、その足場の不安定なゆらぎが、心に適度な緊張感をあたえて少しおもしろい。
これは少しずつ少しずつ拾い読むようにしていってる。まとめて読むと、なんだかぐるぐる回転させられて平衡感覚を失うような、頭がくらくらする錯覚に陥りそうな気がするから。だから、読み終わるのはだいぶ先のことになるだろう。