劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

劇場版 鋼の錬金術師シャンバラを征く者 完全生産限定版 プレミアムDVD BOX劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 (通常版) [DVD]
本編の続編としてはなかなかよくできていた*1。基本的には兄弟の再会を中心としているため、ロイ・マスタングの活躍はそこそこあったものの、本編でその役割を終えた者たちは、映画版では殆ど端役として過ごすか死をもって弔われることになる。
エドワード・エルリックにしてもロイ・マスタングにしても、彼らがなぜこうも魅力的なキャラクターなのかといえば「人のために自分を動かすことができる」という点だと思う。少し内容に触れるが、エドはアルを取り返すために門の向こうの世界(現実世界)に飛ばされた。マスタングは、ホムンクルスを倒しヒューズの仇を討つため、キング・ブラッドレイと直接対峙した。
そのため、エドは元の世界に戻る方法を模索するが、進展が無いまま2年が過ぎ、現在ではその情熱に取って代わって焦りと諦めが彼の中を占めつつある。マスタングは自らの錬金術を封印して伍長にまで降格、今作では北方の極寒の地で軍務に就いている。
二人ともこうなることはある程度は予想できたはずだ。しかしそれでも果たさなくてはならないもの、取り返さなくてはいけないもののために、覚悟をし行動した。自らが選んだが行動のため、その結果がたとえ今の逆境だとしても彼らは決して後悔の念を抱いたりしない。ただ、今いる自分の世界を受け入れるだけだ。
人間の本当の強さは、不利な状況に身をおいたときにこそ試される。そういった点で、彼らは「強い」。
今作の最期のほうでも、エドは元の世界と門の向こうの世界(現実世界)のためにある決心をする。ここでも自分のためよりも、この2つの世界のためにエドは行動をする。そもそも、本編でさえ「弟の体を取り戻す」ために旅をしていたエド。だから『元の世界に戻る』という「自分のため」の行動はうまく機能しなかったのかもしれない(方法がわからなかったというのもあるが)。

ラストはわりとあれでよいと思っている。最上のエンディングの方法もあるのだが、あの終わり方をすることによって「鋼の錬金術師」という世界が完全に閉じることなく、多少の引き(名残惜しさ)をもったまま幕を下ろすことができる。
本編の最期でも言っていた。
「この世界は不完全なものだ。何もかも完璧というわけにはいかないさ*2

*1:なぜ今感想かは理由があるけどここでは伏せる

*2:ロイ・マスタングのセリフ