全4巻だったら、小説とほぼ同じ値段になるね

ぼくと未来屋の夏(1) (シリウスKC)

ぼくと未来屋の夏(1) (シリウスKC)

夏休み、未来屋のおじさん(まだ25歳)との出会い、神隠し伝説、とジュブナイルに必要なものが過不足なく揃っている。未来を予想というのも、推理や予想の範疇によるものだが。
内容については、完結した時に感想を述べたい。1巻は全体の話の序章にすぎないので。その他の感想。
表紙カバーが単行本のソフトカバーのようで触っていて気持ちが良い(笑)。武本糸会の描く絵は癖がなく男女共に受け入れやすいだろうし、はやみねかおるの話にマッチしている。kiaoは未来屋の猫柳の年齢にちかいのだが、読むときには完全に主人公の山村風太視点だ。小学生の時の、あの“今年こそはなにか特別なことがおこってしまうのではないか”とドキドキしてしまう夏休みの感覚を喚起させる力がここにはあると思う。マンガって基本的に読者は第3者視点(小説でいうと3人称)に立たされるのだが、このマンガは山村風太の視点に没入することができる。小説でいう1人称のような描き方がうまくでている。これが武本のネームの切り方のうまさなのか、kiaoの個人的な郷愁の念のためなのかは判断しかねるけれど。
良質なマンガ。考えてみたら、等身大の小学生を良く描いた作品なのに、いまや幼年誌や少年誌には*1こういう作品にふさわしい舞台がない*2。いや、昔からかもしれない。そう思うと、児童文学というジャンルの特殊性をあらためて思い知った*3

*1:少年誌はバトル、少女誌は恋愛、どちらも本能を刺激するものだから単純に子供の動物的な面にダイレクトに反応を起こす。商売になりやすいのです。

*2:シリウスは漫画好きな人向けではないかと。小学生はジャンプとコロコロで手一杯?

*3:かくいうkiaoも、子供の頃はマンガばっかり読んでいたが。いや、今もだ。