走る、走る、俺たち

偶然の音楽 (新潮文庫)

偶然の音楽 (新潮文庫)

まあ、走り終わってから話は始まるわけだが。
妻に去られた主人公ナッシュは、ある日突然20万ドルの遺産が転がり込んできた。しかし、妻を取り戻すにはもう手遅れ、姉の所に預けいた娘のジュリエットはナッシュよりも姉の家族との生活に慣れてしまっていた。すべては遅すぎたと嘆くナッシュ。そうして「遺産が尽きるまで」と、すべてを捨てて赤いサーブに乗ったナッシュの目的のない旅も、あてもないまま丸一年が経過した。遺産も尽きかけていたそんなある日、謎の若者ポッツィと出会う。聞くところによると、彼はある儲け話をもっていて、成金2人組とのポーカー勝負に1万ドルの資金さえあれば絶対に勝つことができるという。ナッシュが試してみると、たしかにこの少年には博打の才があるようで、もとから遺産の尽いた後に何のあてなどなかった彼は、残りの金をこの若者に賭けてみることにした……。

背表紙に、現代アメリカの文学の旗手が送る、理不尽な衝撃と虚脱感に満ちた物語とあるが、とくに理不尽だと思わなかったし(主人公は奇跡を起こしてでも必ず幸せにならなければならないんだ、と思っている人は別だけど)、虚脱感は「妙にハンパなところで終わってるな」ということか?まあ、人生なんてあっけなく終わる人は終わるんで(←反転)。オースター読了4作目なのだが、どうも今作は中身が薄い。「偶然の音楽」まあ、偶然が幸運をよぶとは限らない、ということか。

解説は小川洋子