夜空に、ほのかな光たちがふわぁ〜っと、……という妄想をしてはいけません。

蛍 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

蛍 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

一転二転三転と、とことん揺さぶられた。なんだ、何を書いてもネタバレになってしまうぞ、これは。
麻耶雄嵩初読みだったので、最初のほうは「オーソドックスな文体だな」しばらくして「館ものか。ということは…やっぱり閉じ込められた」それから「一人称なのか三人称なのかよくわからないな、これ。読みにくい」と思いつつつらつらとページを捲っていった。
ページ数も残り1/10にもなって、「このまま素直に解決?」と油断していたら、「えっ、うそ」その後、「ああ、だからか。……そんな設定かー!!」最期には「……うわ、ひどい。そんなことしなくても」とトコトン楽しませてもらった。これこそまさにカタストロフィ。
以下、真相に触れるため反転↓
地の文が焦点が定まらず、ぎこちないなと思ってて、時々ある「これ、誰が言った言葉なんだ?」という正体が、諫早ではなく長崎だと判明した時、ようやく腑に落ちた。そうでなかったら、kiaoの中では麻耶が「文章のぎこちない人」で定着するところだった。あと、一瞬「諫早、手ぇ出すの早すぎじゃないか」と。最期に島原が一人に真犯人を絞り込んだあと、読者にとっては[立ち聞き]諫早[残り一人]長崎 であったのが、そのあと諫早が浴槽で死んでいて混乱に陥るが、作中人物感では[立ち聞き]長崎[残り一人]諫早 であり当然の帰結ため、純粋に読者を騙す為だけに用意された仕掛けだから、ずいぶん意地が悪い(笑)。メタの王道ではあるが。それを踏まえた仕掛けでいえば、松浦千鶴を当初「<ボク女>うざいわ〜」とずっと思っていたけれど、それも納得。地の文で千鶴千鶴言っているのに会話文では「松浦」だから、ここにも違和感があったのだけれど。そして、館の裏が山場だと言っていて内心「そんな危ないところに館建てるなよ」とツッコミを入れていたのだが、それがあのラストの仕打ちとは。ここはもはや作者の趣味だろう。これがウワサの麻耶雄嵩の意地の悪さですか!?ひ、ひでぇ。
音楽と館の関係で、雨がメンバーを閉じ込めておくという作者の都合以外で効果的に必要とされていたのは美しかった。