衝動買い
- 作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1993/10/01
- メディア: 新書
- 購入: 9人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (75件) を見る
印象に残ったのは、夜中のバス停留所で出会った目の美しい少年と、その少年の肩に乗ったサルのようでいて実は人間である兄に占いをしてもらうくだり。
そのとき初めて、僕は少年が負ぶっている動物と思ったものが、猿ではなく、人間だとわかって慄然とした。(・・・中略・・・)その子の肉体は形も大きさも、プロポーションを失ったままちぢかまっていた。手足は彎曲し、変形して、グロテスクとしかいいようのない、無残な秩序と寸法を強いられていた。(・・・中略・・・)その顔にのこっている唯一の人間らしい要素は、目だった。非常に小さい、するどい、かしこそうな目が、差し迫った危険か恐怖にとりつかれたかのように、あるゆる方向に不安げに視線をはなっていた。