「健全な肉体は偏執な精神から」

博士の異常な健康

博士の異常な健康

まさに体を張ったルポタージュ。芸能界が誇るスーパーアスリート集団であるタケシ軍団のなか、軍団始まって以来の虚弱児と呼ばれた水道橋博士。〈読者には、運動偏差値が平均以下の俺だからこそ、その取り組みと変化を共感して欲しい〉とあるように、「育毛」「近視矯正手術」「胎盤エキス」「ファスティング(断食)」「バイオラバー」「加圧式トレーニング」とまさに自らをサイボーグ化するように異常なほど(それは芸人魂もあってか)の健康への未知への扉を叩きまくる。
この本の信用性は、すべて博士自身のために行ったことであり、成功すればそれでよし失敗だったらネタにすれば元が取れるという実験精神が大いに発揮される土台、数年単位での効能、そしてテリー伊藤ゆずりの芸人であると同時に歯に衣着せぬルポライターの一面を持つ水道橋博士*1だからこそ生まれてくるのだろう。
本書で試されているそのどれもが、試さずにはいられないほどの驚異的な魅力を持っている。
例えば「加圧式トレーニング」では〈ちなみに研究によると、腕と足の付け根を加圧し、15分間足踏みをするだけで平常時の100倍の成長ホルモンが分泌したとのこと。これは人生における人間の肉体的ピークである16歳の分泌量に匹敵するほどの量だ〉とか、「胎盤エキス」では〈胎盤は“体内の乳母”であり、アミノ酸、ビタミン、ペプチド、ミネラル、酵素核酸など実に多種多彩である。胎児が生まれた後、細胞増殖因子は通常3歳くらいまで体内で旺盛に分泌され、成長期が終了する16歳を過ぎる頃から急激に分泌量が減少していく。最近の研究では、この細胞増殖因子の減少と老化の進行が相関関係にあるともいわれ、細胞増殖因子を摂取できることから、胎盤エキスの若代わり効果が注目される。人間の組織の中で、これだけ多種多様の栄養素が見つかる場所は胎盤だけ〉など、美容・健康の情報がこれだけあふれ何を信用してよいのかわからなくなる昨今、とりあえず水道橋博士という太鼓判が押された本書を読まれたらいかがだろうか。
特に「バイオラバー」などめちゃめちゃ胡散臭いのだけれど、博士が紹介する(そして自分でも実践している)ことによって信用してもいいかなと思えてくる。
何よりその実験結果がブラウン管を通して今すぐに見れるというのは貴重なサンプルである。
博士の言葉遊び感覚は、加瀬あつしと同等のレベルを持っていますな。

*1:プロピアの保知社長がCMに一貫してテリー伊藤を使う理由として、〈あの方は演出家であると同時に厳しいジャーナリストの一面もお持ちですから、絶対に嘘をつかないじゃないですか〉より