THE CLOSED ROOMS ARE SEEN FROM THE SKY

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

「あいた」「あいたじゃねーっつの。真面目に考えれ」(中略)「阿呆か。常識で考えてて、エドワード・ホッパー思いつくかつーの」。(中略)「こういう訳の判らん事件では、訳の判らん発想が必要なんやって友紀夫」

さんざん使われ手垢にまみれた言葉だけれども、それでもやはり言ってみる。
舞城が持つ文体のドライブ感は気持ちいい。
今回のエドワード・ホッパーといい、他の作品で「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の冒頭部分のことが会話の中に出てきたりと、微妙に「村上春樹」という単語を見せる、ちらりと。
地方に在住する怪物的存在をうまく書いている部分に、ジョージ朝倉溺れるナイフ」と似た匂いを感じるのはkiaoだけだろうか。密室自体はスイッチでンゴゴゴだからどうでもいいのだけれど、上空からの視点というのをかなり意図しているのだなというのが前作の「煙か土か食い物」からも伺える*1。「捕まえてあげる」みたいなのは「キャッチャー・イン・ザ・ライ」とかであったのではなかったっけ。
モノを作り出す作業、とくに自分の内面から生み出す文筆などはえてしてネガティブなもののほうが自然と創り出し易い。そういった意味では舞城みたいにどこか突き抜けるような作風をもつものを生み出せるのは、いい仕事していると言いたくなる。

*1:というのを何かで読んだのだが、思い出せない 前作で見せたのは三角形をずらすことによる「ダビデの星」の出現