そして残ったのは、……

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

孤独は読んだり考えたりする時間を与えてくれる。しかも記憶がふたたびよみがえりはじめた――過去を再発見し、自分がほんとうはどこのどういう人間なのか見いだすチャンスである。もしなにかまずいことが起こったとしても、少なくともそれだけの収穫はあるだろう。

今の時代、本人の意識しないうちにいつのまにか本の内容が耳に入ってきてしまうことがある。それは名作と言われるものほど、その傾向がある。情報が手に入れやすいと言うことは、よい本*1に巡り合える可能性が高くなる(ハズレを引く確立が低くなる)、反面、いつのまにかその本の知識が入ってきて純然たる「初読み」になれない場合も出てくる。どちらがよい、と言う問題でもない。選ぶのは読み手だ。ネタバレが嫌なら情報を遮断すればいい。耳に入ってきていると言うことは、自分でそのようになることを少なからず望んでいるということだ。
ということで、本書はkiaoにとっても純然たる「初読み」とは呼べないかもしれない。それでも言えることは、

前知識があろうと、「名作」は「名作」である*2

どんなに自分のしてきたことが無駄に終わったように見えても、必ず、何かが残るということ(それは自分にとっても、まわりにとっても)。それは'かの箱'の中に唯一残ったものと同じ名前を持つ。

かねがね疑いを抱いていたのだが、あのチャーリィはやはり去ってはいなかったのである。人間の心の中にあるものは決して消えてはしまわないのだ。

*1:その基準はもちろん個人差があるので、それも考慮に入れて

*2:さすがに、クリスティのアレは前知識があるとお話にならないが