その準備は、すでにできていた

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

秘密を告げるように、真剣なまなざしで、
「わたしの、この夏の運命を左右する……」
「運命……」
「<小佐内スイーツセレクション・夏>」
ぼくはゆっくり玄関のドアを閉めた。

とここで「扉は閉ざされたまま」でいたらあの事件は起こらないままでいたのかもしれない。そうは言ってもそういう訳にもいかず、小鳩君は小佐内さんのこの計画に同行する羽目になるのだが……。
一つ一つの短編としてならそこそこ。しかし、事件はこの一冊を通して「夏季限定トロピカルパフェ事件」だったのだ。四季シリーズにするつもりで続刊である本書を出したのなら新キャラを投入して話の膨らみを持たせることもできようが、著者はあくまで小鳩君と小佐内さんのこの関係性を描ききることに執着したいらしい。そのため、無駄なものがない、ストイックなほどに読者へストレート・真っ向勝負を挑んでいる。……つづく!?