それは、ゆるやかな運命論。

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

例えばあなたの恋人が、どこかで見たことあるようなヤツと二人きりで街を歩いているのを見かけた。後日そのことを恋人に問い詰めてみると、最初は「気のせいじゃない!?」とか田舎から「上京してきた弟なの!!」などうまくはぐらかそうとするもそのあなたの真剣な態度が揺るがないのを見て取ると、その恋人は観念したかのように、こう答えた。
「……実はね、あれは8日後の未来から来た『あなた』なの」
その言葉を、あなたは信じることが出来ますか?

というわけで、今巻はまるごと「未来人の話」。俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。しかも事情を全く知らない彼女を送り出したのは、なんと俺だというのだ。未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?ということで、俺こと「キョン」と「朝比奈みくる改め朝比奈みちる」を中心として、いつものメンバー以外にもいろんな人間が続々登場する。そして作者自身もう少しこのシリーズを続ける気になったのか、ここでいろいろな複線を張り残していっている。SOS団の内輪でぐるぐる回っていた物語が、少しずつ涼宮ハルヒを観察対象とする外部組織、それらと別勢力といったものとの接触が多くなり広がってゆく。もちろん、被観察対象の本人はまるで気づいてはいないのだけれど。

一巻(憂鬱)のラストが「何も知らないハルヒ・つまらない世界に飽きてもうひとつの世界を本物と交換させる」ときたから、シリーズ全体のラストは「全てを知ったハルヒ・宇宙人も未来人も超能力者もウジャウジャ存在する場所にこの世界を改変」でそれを阻止するために、3人がそれをなかったこととするよう、ハルヒの記憶から騒動の大本といえる自分たちの存在を消すことを決意する、キョンにサヨナラを言って……という感じかねぇ。