他者を見る目が恐ろしいほど鋭く、温かい。

本を読むわたし―My Book Report

本を読むわたし―My Book Report

小学生日記」の時、誰かが「まるで大人の世界からスパイを送り込んだのかのように、子供の世界をありありと、鋭く、瑞々しく書いている*1」と言っていた。本書を読んでいて、その言葉をまた思い出した。読んでいるうちにいつのまにか著者の目線と同化したような錯覚に陥ってしまうのはなぜなのか、と考えてみると、それは著者が、本当によく他人を見ているからだと思う。後の文章になればなるほど、文章のうまさと比例してそのことが顕著にわかってくる。文章のうまさという点でいっても、最初は出来事か、本か、とちょっとばらばらな語りも、著者の身の回りに起きたできごとと、そのとき読んでいた本とのリンク・共鳴する点との交わらせ方が巧みになってゆく点がおもしろい。

「ハナエ、なんでシューマンが好きなの?」
「だって、曲がきれいだから。ピアノが一番きれいに聞こえるように作曲されてあるんだって。曲自体はそんなに難しくないんだけど、ハァーッてため息が出るくらい、すっごくきれいなんだよ」
シューマン」より

ハァーッてため息が出るくらい、すっごくきれいな文章です!!

個人的には「ココナッツ」にでてくる山下君に負けました。ジーパンのエピソードとか、何もかも。ワタシマケマシタワ。

*1:おおよそ、このような感じ