ここに、貴重なサンプルを提示する
- 作者: エラリー・クイーン,井上勇
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/12/02
- メディア: 文庫
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開始20Pぐらいでもう殺人事件が起きるのは、なんてせっかちさんなこと(それがまた、本書唯一の事件なのだから)。で、間はずーっと捜査&推理。クイーンの文体は、いい意味でも悪い意味でもオーソドックスだ。読者に情報を伝えると言う役目を忠実に守っている。チェスタトンの文章みたいに、幻惑的な文章があるわけではない。レーンの時には、主人公との大人の(落ち着いた)友情みたいなものが微笑ましくて気に入っていたが、本書ではリチャードとエラリーの(これまた落ち着いた)親子関係が好印象。出てくる人物も、小説のためにエキセントリックに演出された人はおらず、みんな(ある意味)いい人なのが、かえってリアルだと思いませんか(って誰に言っているのだろう)?
で、事件の結末は、なるほど、といった感じ。犯人が、帽子を持ち去る羽目になったのは予期せぬ出来事だったことを推理するくだりは、さすがと感嘆。こんな夜会服を着てくるような(オシャレさんな)人なら、シルクハットをかぶっていて当然なはずなのに、というところは「そうかぁ!?」とはツッコミたくなったけれど(半分冗談。時代背景のせいでもあるだろう)。最後犯人をワナに嵌める部分は、冒頭のリチャード・クイーンの(架空の)文献からの引用文が、その後におけるスパイス*2的な役割を担っているのを知り、うまいなぁと素直に思う。
4ヶ月に1冊のペースで読めば、3年ちょっとで国名シリーズを完読できるのかな。さすがに、連続ではこの地味な文章を読めない…。ま、派手ならいいというのでは、もちろんなくて。あと、この「殺人事件おこる→ずっと推理&捜査→解決編」という流れにマンネリを感じたくないという思いがある(むしろ、こっちのほうが強い)。読むのだったら、なるべく新鮮な気持ちで読みたいし。たまに読むといいですよ、ミステリは。人が死んだ時ちょっとショックを受けるもの(やっと一人死んだか、って気持ちは、考えてみるとちょっと怖くない?(笑) )。シャブだって、たまに打った方が効き目強い(らしい)んだから(→どんな喩えだよ!!)。