変人さん いらっしゃい

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

ふたたび注釈を付け加えておこう。この修道院が、フョードルの人生になにか特別な意味をもったことも、彼がそのために苦い涙を流したことも、一度もなかったのである。だが、彼は自分がこしらえた涙にあまりに夢中で、一瞬、自分でもほとんどそのことを信じかけたほどだった。しかし同時に、そろそろ引き時だとも彼は感じていた。フョードルのこの悪意に満ちた嘘八百に対して、修道院長は頭を下げ、さとすような態度でふたたび言った。

(今のところの)
一言要約:困った人々


はっはっは、もう爆笑だね!! 変な人ばっか。普通の感覚からしたら、軽くイッちゃってる感じなんだけれど本人たちは大まじめ。そんな変人たちに、まともでいい人ののアリョーシャが翻弄される話。さすがメロドラマ!!

ここでちょっと登場人物たちをまとめてみる。

アリョーシャ :カラマーゾフ家の三男。本作の主人公。いい人が、その人の良さにつけ込まれて変人たちに翻弄される典型。
フョードル  :カラマーゾフ家の父親。本書で起こる騒動の元凶。他人を嘗めきっていて、自分のことばかり考えている。ダメオヤジ。
ミーチャ   :カラマーゾフ家の長男。フョードルと激しく対立。だが、その実彼の本質は親父に似た部分がある。
イワン    :カラマーゾフ家の次男。ニヒリスト。神を信じない子。引きこもり体質を持ってる!?
スメルジャコフ:カマラーゾフ家の下男。料理人。つかみどころがない。これからに期待。
ゾシマ長老  :アリョーシャが暮らす修道院の長老。 おじーちゃーーーん!!
カテリーナ  :ミーチャの婚約者。イメージ的に「ホーホッホッホ!! 」な感じ。煽てに弱く、そのため騙されやすいみたいな。
グルーシェニカ:ブリッ子ぶってて、その裏したたか。だけどそのしたたかさを特に隠そうとは思っていない。
リーズ    :14歳。アリョーシャ好きっ子だが、リアル女子中二病


上記の通り、フョードル・クソ・オヤジのせいで、起きなくてもいい騒動が起こってばかり。それでこの親父は、口先だけの調子のいいだけの奴。だが物語的には、この親父のおかげでいろんなイベントが発生してくれる。

舌の虚栄心。−−人が自分のよからぬ性質や悪徳を隠そうがあからさまにうちあけようが、結局いずれの場合にも彼の虚栄心がそのさい得をしたがっている、だれの前でああした性質を隠し、だれの前で正直に率直になるかということを、彼がいかに巧妙に使い分けるか、よく気をつけてみるがいい。


フリードリッヒ・ニーチェ「人間的、あまりに人間的1」


次巻へ続く。