『MIND HACKS』による「10%の神話」
このエントリは、上記エントリに対して、あくまで「たまたま私が持っていた本にはこう記載してありました」というだけのものです。皆様のご参考になれば、と*1。
『MIND HACKS』には、正にこの議題に対して(本書においての)回答となる章が存在します*2。
以下に一部を抜粋します。
神経心理学では、脳に損傷を受けた人が、その結果として知性、感覚などの面でどのような変化をきたすかを研究する。この研究により、脳の各部位がそれぞれどのような役割を果たしているかがわかる。この研究により、脳の各部位がそれぞれどのような役割をはたしているかがわかる他、「10%の神話」が実はまったく正しくないということもわかる。仮に我々が脳の10%しか使っていないのだとしたら、中には失われても何の問題も起きない部位もあるはずだ。だが、脳はどの部位であれ、少しでも失われれば、通常ならできるはずのことができなくなる(少なくともうまくはできなくなる)。つまり使っていない部位などない、ということだ。決して10%しか使っていないということはない。
(P.12)
進化論の観点から見ても、「10%の神話」が真実であるとは考えにくい。人間の脳は非常に「コストの高い」組織である。脳は、重さは体重の2%ほどに過ぎないにもかかわらず、心臓から供給される血液の約20%、そしてそれと同程度の酸素を消費する。90%の部位が役に立たないような組織を、それほどの大変なコストをかけて維持している、などということがあるだろうか。進化論に照らせば、そんなことはあり得ないとすぐにわかる。
(P.13)
以上のように、神経心理学の観点からと、進化論の観点からをもって「10%の神話」の可能性を否定しています。
またこの他にも、
・「グリア細胞」の数はニューロンの数の約10倍だから、これが「10%の神話」の元ネタならたしかに「大脳皮質を構成する細胞のうち、わずか10%のみが認知に直接関与している」って言えるかもしんないけど(大意)
・もしかしたら「部位じゃなくて脳全体が持つ能力の10%っていう意味だ!!」ってな反論をするかもしれないけれど、能力の大きさって正確に数字に表せるもんじゃないから、ここで「何%」という表現を持ってくること自体、お門違いだよね(超大意)
と、予測される別の言論に対しても意見を述べています*3。
私は脳の専門家ではありませんし、しかも本書についてもまだほんの少ししか読んでいないので大きなことは言えないのですが、本書の見解がまあ妥当だろうと考えます。
ちなみに、<かなり昔のテレビ番組では事故で脳の半分が失われたが、子どもだったおかげか無事だった脳が右脳と左脳の双方の能力を得て成長したという事例があります。>という部分についても、本書では水頭症のケースを引き合いにして、同様の意見を述べています。
詳細については、ぜひ本書を手にとって確かめてみて下さい。
- 作者: Tom Stafford,Matt Webb,夏目大
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 14人 クリック: 195回
- この商品を含むブログ (199件) を見る