少し前に読んだもの
この圧倒的な収録数。国内外問わずまとめたのは○。内容も、あくまでメディアに文章として発表されているものを出典としているため、文献としても正しい方向性。
ただ、<バンド結成はどのように描こうと、偶然の域を出ることはない。だが、解散は偶然ではない。*1>とせっかく良いこと言っているのですから、もうちょっと対象を選んでもいいのではないでしょうか?
もちろん、がっちがちにバンドだけで固めなくても良いとは思います。でも、たとえば『制服向上委員会』とかは、今回の趣旨とは全く違うのでは?(個別の事象としてはおもしろいですが) これの結成って、偶然ではなくてあきらかに意図的なものですし。
あくまで、「音楽を創る」という(表面上であっても)1つの目標のために結成した集団が、どのような過程を経て、結果的にそれを解散するに至ったのか? というもののケースヴァリエーションを楽しむことが、本書の意義だと思っています。
とまあ、なんだかんだ言っても、これはなかなか良いものです。たしかに、音楽雑誌では語れない内容ですね。音楽をする集団である「バンド」も、あくまで「人間」の営みと考えれば、人間的な摩擦がそこに及ぼす影響は見過ごすことのできないものでもあります。ともすれば、ゴシップと紙一重なものでもありまけれどね。
バンド関係の本として、必携の1冊です。
- 作者: 押井守
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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<映画の勝ち方っていうのは、極論すれば監督の数だけある*2>と言い、こと押井監督自身で言えば「次の映画を撮るチャンスを獲得すること」であり、そのためには勝ちすぎないこと、大ヒットをださないことが「映画を続ける絶対条件」としているとのこと。
映画を撮り続けること自体が目標というのは、映画監督として至極健全な形だと思います。仕事の報酬は仕事である、みたいな。
「勝利条件とは何か?」「≪発明≫なしには映画の仕事はありえない」などといった観点から、個々の監督について論を展開してゆきます。
「一流のクリエーターは、一流の批評家でもある」という言葉があるように、長年第一線で活動してきた監督ならではの鋭い分析、またそれが読んでいてとてもおもしろく、一気に読んでしまいました。