夜が終わる場所 (扶桑社ミステリー)

夜が終わる場所 (扶桑社ミステリー)

アメリカ中西部の小都市の朝。警官マックスとバンクがデニーズで変わりばえのしない朝食を待っていた。その時、警察無線が少女の失踪を報じた。バンクはマックスを引っ張るように少女の家へ向かい、母親の前で号泣した。バンクの娘も七年前に失踪していたのだ。だが、バンクの涙にはもっと深い意味があったのだ。

話は、少女失踪事件がおきた現在、バンクの娘が失踪した7年前の話、幼いころマックスがバンクに初めて出会いどのように2人が成長していったか、という三つの話が交互に入れ変わりながら語られてゆく。主人公マックスの一人称で語られてゆくのだが、話のはじめ数十ページは自分のことよりひたすらバックについてマックスが語っている。そのことによって、マックスがいかにバックについて友愛の感情をもっているのか、いかに尊敬の念を抱いているのかということが伝わってくる。ここの描き方が丁寧だからこそ、事件を通してのバックの変化、マックスの葛藤という「揺るぎ」の部分がうまくかかれ、ある謎が判明した時のマックスの受け入れがたい感情に無理が生じることがなくなっている。

表紙を見て、全体的にもっと暗くて絶望的な話かと思ったがそうでもなかった(明るい話ではないが)。派手さはないが、丁寧といった感じ。失踪の解明のための行動が淡々と進んでゆくので、終盤に至るまでは話のテンションがそれほど激しく上下することはない。ミステリーな部分よりは、二人がお互いにとってどういう存在なのかという部分が、この小説の核心だろう。

さて、「夜が終わる場所」とはいったいどこのことだったのでしょう。
事件という「夜」が終わる最期銃撃戦があった場所なのか、少女を性的被害という「夜」から逃げ込ませるための慈愛の姉妹の家なのか。(反転)