人の心を読む力

中学一年生の磯崎蘭は、その年の明けたころからころから頭の中にふっと声が聞こえるようになる。物語の始まりは入学式の次の日のことだった。その日は少し違って、はっきりと自分に呼びかける声が頭の中へに伝わってくる。いつものように幼稚園の頃からの幼馴染である綾瀬留衣(男)と一緒に学校へ向かう変わらない日常、そんなはずだった朝の登校時、蘭は挑発されるような声でテレパシーを受けるとともに出会ったのだった。その声の主、転校生・名波翠に。

超能力を持った二人の少女の出会いに始まり、二人を狙う何者かの宣戦布告のような攻撃、黒衣の仮面のものとの遭遇「違う お前も違う ではどこにいる」、ここ一年に蔦野市とその周辺で起きた4つの奇妙な事件。出だしとしては、なかなかの好スタート。

蘭や翠はテレパシー能力のほかにも、皮膚をつねったり人体を持ち上げるといった物体に作用する力も持っているらしい。
超能力者をテーマにした話といえば「NANASE(原作/筒井康隆 画/山崎さやか)」がある*1。「NANASE」のほうは、精神感応能力者〈テレパス〉である主人公・火野七瀬をはじめ、予知能力者、透視能力者〈クレア・ヴォヤンス〉、念動力者〈テレキネシス〉、時間旅行者〈タイム・トラベラー〉など、ある限定された能力に特化されていたのに対して、蘭のほうは人智を超えた能力一般としてのテレパシーであり、念動力も使えるし、もしかしたらこれから他の能力も使えるようになるかもしれない。

テレパシーを扱えるといった場合、ネックとなるのは「人の心が読める」という部分だ。「NANASE」の場合、七瀬の頭の中に他人の考えが外の様々な電波を傍受する無線機のように自然に入ってきてしまい、それゆえに他人の裏が常に見えてしまうこと・能力者特有のエリート意識と孤独感に常に悩まされている。一方蘭のほうは、テレパシー能力者は能力者同士なら多少離れていても携帯電話のように会話ができ、神経過敏な子の感情が伝わりやすいという部分はあるが、心を読もうと意識した時に読むことができるらしい。

「NANASE」は、人と違う能力を持ったがゆえの苦悩を描き出しているが、「テレパシー少女蘭」は、いったいこれから話がどんな方向に進んでゆくのだろう。

NANASE(1) (ヤンマガKCスペシャル)NANASE(2) (ヤンマガKCスペシャル)NANASE(3) (ヤンマガKCスペシャル)NANASE(4)<完> (ヤンマガKCスペシャル)家族八景 (新潮文庫)七瀬ふたたび (新潮文庫)エディプスの恋人 (新潮文庫)

*1:原作は多少読んだ 漫画は既読