His name is Earl
- 作者: 森博嗣,山田章博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/28
- メディア: 単行本
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ミステリーランド初読*1。子供に向けているからこそ、その筆に真剣さが見られて好感が持てる。大人の読者が読んでも十分に観賞に耐える*2(その場合は中篇扱いか)。
いつもの森博嗣臭は(なんか失礼な言い方だな)だいぶ薄められていて、わりと普通な文体。それでもいつもの森節が各所に見られ、子供へのメッセージ、子供をとりまく環境について語られる部分については、むしろ小さな子供を持つ親にこそ読んで欲しいほど。しかもそれがおしつけになってなく、そのさりげなさが本当に絶妙。つらつらと読んでいて、「あ、これはゲームというものへの言及だな」「これって、もしかして一時期マスコミが(勝手に)騒いでいた《ナイフを持ち歩く少年》について語っているのかも」と読み手が読み取ろうとする時にきちんと伝わる書かれ方になっている。
「僕」こと「馬場新太」の一人称で語られるのだが、不必要に幼さを出したり背伸びさせた感じのない素直な語り口。大人である「伯爵」のほうも、「僕」と話す時は目線を下げたりはしない、人として一個人として対等に話す。
(伯爵)「探偵は、そういう人の大事な秘密を絶対にもらしてはいけないの だ。」
(僕) 「探偵じゃなくても、(他人の秘密を*3)もらしたら駄目だと思うよ。」
(伯爵)「探偵じゃない人間は、そもそも秘密を知らない。」
(伯爵 宿敵「怪盗男爵」について僕にいろいろ説明……。)
(僕) 「ふうん。」
(伯爵)「納得しているふうの顔だな。」
(僕) 「ううん。全然。」
子供に対して子供扱いしないからこそ、ストーリーには過剰に夢のような部分を持たせたりはしていない。最期の2Pのような構造は、すぐに予想できたがこれはあまり重要な部分ではないので、そんなにこだわるところではない。
どうでもいいけどP100・101の見開きイラストは、伯爵がすごく渋く描かれているがゆえに、全体で見たシュールさが余計に強調されて、ふいたッ!!*4