この描きこまれた服たち、追随する者なし

CLOTH ROAD 3 (ヤングジャンプコミックス)

CLOTH ROAD 3 (ヤングジャンプコミックス)

もう表紙にして「買い」である。okamaはマンガとしては決してうまいほうではない。しかしイラストレイティングは抜群である。それも人物というかキャラがもつ吸引力というよりも、衣装や小道具といったファッションに見えるセンス・デッサン、そしてそれを形作る倉田脚本による世界観を見事に描ききっているこの作品は、okamaが持つ魅力を十二分に発揮されている作品だ。
okamaの描く線は細めで、人物と背景に明確な線の違いがない。通常こういった場合、えてして人物が背景に埋没してしまいキャラクターが浮き出てこないという欠点になりかねないのだが、この作品の核となるのはその「世界観」なのでありキャラクターの人間臭さが主張しすぎないぶん、それを包む衣装や舞台が極めて有効的にその魅力を浮き立たせる。「ファッション×アクションコミック!!」とはまさに言いえて妙。三浦建太郎のタッチがその鎧や剣、悪魔などに見られる重厚的な西洋的世界観に寄与しているとしたら、okamaのタッチは幾重にも重ねられた布・布・布、それでいて失われない妖艶な軽やかさで独特なファンタスティックヨーロピアンスタイルに(それはまるで逆ヌーベルシノワのように)寄与している。

そうはいってもファーガス・ジェニファー兄妹(双子)の成長譚としても読ませてくれる。性格的に内向きなファーガスとひたすら外向きのジェニファーはまるで水と油のように混ざり合うことがなく言い争いが絶えない。2巻ではそのため、身も心も同調しあうパカテロ・クエンティン姉妹にあわや敗北というところまで追い詰められる。が、窮地に陥ったジェニファーはこう言ってのけた「……怒りっぽくてスケベで根暗だけど……私のたったひとりの相棒よ」。あいつはいつも自分の”信じられない”ことをしてくれると”信じられる”関係を再確認しあった二人は辛くもこの戦いに勝利する。そして3巻では、二人が赤ん坊の頃にくるまれていた謎の布の正体を解明しようと世界7大ブランドであるロイヤルカストラートの街を訪れる。が、そのロイヤルカストラート社によって二人は離れ離れにさせられてしまう。しかしそんな逆境において二人は互いに、ファーガスは母親を助けるため、ジェニファーはモデルとしての力をつけるためそれぞれの場所で自分を磨き上げる。離れて一人になっても、決して独りではなかった。

はたして二人はどんな再会を果たすのか。そしてついに動き出した7大トップブランドと星の服をめぐる大きな物語はいったいどこへ向かってゆくのか。目をそらさずにはいられない。