終らない、この殺意

どこまでも殺されて (双葉文庫)

どこまでも殺されて (双葉文庫)

僕は依然、死が怖い。ある意味で今まで七度死は優しく訪れた。降りしく花や夏の光や優しい雨音や黒い光に変わった闇とともに。でも結局はただの何の意味もない空虚なだけの闇なのだ、まっ暗な果てしない闇の海にたった一人漂っていることなのだ・・・・・・

何がすごいかって、冒頭のたった2P目で読み手を物語りに引き込んでしまう氏の手腕といったら、もう。幻想的で満開の桜の花びらが舞い散る背景、小学校の入学式、花の隙間からさす光は朝日なのか夕暮れなのか、その道ではぐれ一人遊ぶ僕、誰かの手が肩越しに僕の胸へ、そう、それは確かに左手だった、長い鎖を持った、鎖の端を誰かの右手が伸びて掴み、次の瞬間には僕の首に巻きつき、そして、僕は生まれて初めて、誰かに殺された……
もう続きを読まずにいらいでか!!
わりと新しい作品でさえどこか昭和のにおいを感じさせる氏の作品だが(笑)今作は今読んでも特に違和感がなく、すっきりと読める(といっても単行本が出たのは平成2年なのだけれど)。登場人物がほとんど若年層だからだろうか。
謎の真相はアウトかセーフかといえば、…ぎりぎりセーフ!?どんでん返しとまではいかなくても、そこそこ楽しめた。結果的にわりと重いの話なのに、むしろ終り方がすっきりしていたので、あっさりとしたメインディッシュというよりも豪華なサイドメニューといった感じだろうか(どんな例えだ!?)。
ラノベとか*1今風の作品の人だったら、横田とか直美をもっと肉付けしてキャラ化する(そして連作にする)ような気がした。それをしない連城氏のストイックさ、スマートだねぇ*2

*1:ってほとんど読んだことないんだけど。某ひひひの方やオールドブリッジの方の作品、途中で挫折した

*2:でも、軍平くんはもっとキャラ化して続きを出してほしい