これを見たあとレッチリの「GET ON TOP」を聴いたよ、なんとなく

シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) [DVD]シティ・オブ・ゴッド【廉価版2500円】 [DVD]
ナイフを石に擦る(鼓する)金属音からその物語は始まる。一羽の鶏の目の前で鶏がさばかれる。目を丸くする鶏。羽を毟られ肉をこそぎとられる鶏。次に己に振りかかる運命を知ってか知らずか鶏は脱走。それを少年たちは追いかける。街を駆け抜け、鶏はカメラを持つ少年の足元へ、その姿を捉えた少年たちの手にはすべからく銃、そのボスは言う「おい、その鶏を捕まえろよ」とっさの対峙にどんな行動をとればいいのかわからなくなったカメラを持つ少年。その少年の遠方をふと見やると、そこには数人の警官たち、銃を持つ少年たちの敵。少年たちはシティ・オブ・ゴッド<神の街>と呼ばれるスラムに根をはるギャングどもだった…。

将来報道カメラマンになりたいと願う<神の街>の住人であるブスカペが、昔話を語るようにモノローグを紡ぐ形で物語は進む。環境が人を生むのか、少年たちは銃を片手にモーテルに押し入って金を巻き上げたり、魚を売った先で間男を働き逃げるために通りすがりの車をジャックしたりと悪事を働くが、彼らにとってはそのようなことはべつにたいしたことでない。茶飯事であり、日常の一幕なのだ。そのなかで力の強いものは頭角を現し、いつしかシマをとりあうようになって、気づいたらギャングとよばれる集団を形成するようになる。
あまり映画に詳しくはないからわからないが、香港映画にあるような混沌とした世界設定を持つギャング世界を通した若者の群像劇の南米版といった感じがしたが、気のせいか。ただ、血で血を洗う抗争のはずなのにどこかカラッとした雰囲気なのはやはりラテン気質である南米のため!?
映像の撮り方もスタイリッシュでかっこいい。そのフレームワークだけで酔える。
結果、かなりおもしろかった。気づいたら2時間以上経っていたことにも驚いたし。この映画はkiaoのなかで忘れることのできないものになるだろう。

あくまで出てくるのは「ギャング」であり「マフィア」ではない。だから中心となるのは青少年たち。警察を買収するのも彼ら。大人になるとお金にならないこと(それが労働であれ悪事であれ)に無駄な時間を費やすことを、生活が許さないためであろうか*1。あと、社会的立ち居地ということもあるか*2
悪事は悲劇を生み、悲劇は新たな悪意を生む、そして悪意を持つ者の行動結果は悪事へ至る。この負の循環から逃れられないようだ、何人たりとも。
Californication

*1:ギャングも金を奪ったり重火器を購入したりしているが、お金が対象とする最大値はまるで違うはず

*2:本当の悪党は、自分の手を汚さないものだ