「…含羞の人だねえ どうにも」「ええ――別れ際まで…」

皇国の守護者 3 (ヤングジャンプコミックス)

皇国の守護者 3 (ヤングジャンプコミックス)

上の台詞は、新城直衛大尉について部下たちが囁きあったときの台詞である。刻々と変わる戦況。思いがけない人の死。非情にも思える彼の采配ぶり、私情を挟まない彼のやり方の理由には、一番上の人間が一つ一つのことに揺れ動いていては下の人間を不安に巻き込むことを分かっているがためである。一人でも多くの人間をこの戦況から耐え抜かせるためには、私情を挟んでいる暇などない。しかしその心内が部下にはなんとなく伝わるのだ。
人を先導するのに飾り立てた言葉は要らない。己が背中で分かってもらえるだけで十分なのだ。
新城部隊に負わされた使命は汚れ役である。はっきり言えば、トカゲの尻尾切りの「尻尾」の部分にあたる。本体を生かすために死ねということだ。
圧倒的な〈帝国〉の部隊に対して、人の数も食料も足りなすぎる。だからといって、はいそうですか、と死ぬわけにもいかない。どんな手段を用いてでも生き残ってみせる。〈帝国〉の侵略を足止めするのも、この部隊を生かすも殺すもすべて「僕」の腕にかかっている。
正気を保って死ぬことになるのならば、狂気に身を投じても生き残ることを選ぶ。この局地戦は、〈皇国〉にとっても、新城直衛にとっても生命線になる運命の一戦である。
そしてこの戦いは、〈帝国〉側のフォン・バルクホルン大尉の戦線突入によってまだまだ混戦を極めることになる…。