冷える消える、見えず
そして誰もいなくなった (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 1-1))
- 作者: アガサ・クリスティー,清水俊二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04/30
- メディア: 文庫
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(前略)もし誰か来たら、僕は撃ち殺してしまう!……しかし、その薄い服では、寒いだろう」
ヴェラは冷ややかに笑った。「寒い?死んでしまえば、もっと冷たくなるわ」
「クリスティー自身に、手がかりを与える気など最初からなかったからである」という解説にもあるように、ミステリーではあるが探偵小説ではなかったことがこの小説が今でも充分おもしろい理由だろう。要するに誰もが殺される可能性があり、誰もが犯人である可能性があるという「登場人物の等価性」ということ。探偵はトランプゲームにおけるいわゆる「ジョーカー」の役目であるから。
ブロアはいった。「なるほど、あんたのいうとおりだね」彼はちょっと考えて、言葉をつづけた。「しかし、この島には動物園はない。この次は子守唄のとおりというわけにはゆくまい」
ヴェラは叫んだ。「動物は私たちよ!……昨晩の私たちは人間とはいえないわ。私たちが動物よ」
英語圏小説にはたまにマザーグースが出てくるけれど、日本人であるkiaoには全く分かりません。翻訳をしてもネイティブでないと、唄の感覚・語感が身に染み付かないもの。