大地を離るる肉体、そして人は初めて世界と対峙する

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

ぼくらは一個の遊星の上に住んでいる。ときどき飛行機のおかげで、その惑星がわれわれに本来の姿をみせてくれる。たとえば月と因果関係にある一つの水たまりが、隠れた関係を示したりして。これにつながる、他の現われもぼくはまた知っている。

半分再読。いいね、やはり。読んでいるその瞬間がとても心地よい。飛行機乗りは、大地という肉体を縛り続ける枷から解き放たれ、余計なものを取り払った「己と世界」という最も根源的で純化された関係を眼前に広がる蒼い空に見出すものなのだろうか。人間が生を営む劇場としての大地、(まさに文字通り)そこからちょっと離れた視点を持つことができるからだろうか、サン=テグジュペリが持つ人々への眼差しは、とてもやさしい。題名の「人間の土地」は、ちょっと上記の意味での「土地」とは違い、まさに「人間そのもの」を指しているのだけれど、でもkioaはそんなことを思ったりするのだ、この本を読むと。