星フル世界ニツナガルココロ

テガミバチ 1 (ジャンプコミックス)

テガミバチ 1 (ジャンプコミックス)

久々の新刊だな、ダーアサ*1。雑誌のほうで一話だけ読んだことがあったのだが、単行本であらためてちゃんと読むことになった。

夜が明けることのない星に存在する国「アンバーグラウンド」。そこは四方が海で囲まれており、海からつながる川により区域(エリア)は三つに分断され、住む人々の階層もそれぞれに分かれていた。人工太陽が真上に輝く首都「アカツキ」は特級・上級階級が暮らす選ばれし人間たちのための都会。二つ目は中産階級が暮らす「ユウサリ」。そして三つ目は下等階級の住人が貧しく暮らす区間「ヨダカ」。
そんなアンバーグラウンドには、首都を除く暗く危険な地域を旅する国家公務が存在する。町から町へ、どんな危険すらいとわず、国民の大切な『手紙』を届ける国家公務郵便配達員「BEE」。通称…「テガミバチ」。

テガミバチ」のゴーシュ・スエードはある配達依頼を任命される。その荷物を受け取りに、ある町外れにある消し炭となったひどい焼け跡を残す場所に出向くと、ディンゴ(BEEの仕事語で「相棒」という意味)であるロダ(犬)があるものを発見する。それは少年だった。その倒れていた少年の左腕には、配達用紙が添付されていた…。

今度はファンタジーか、大丈夫か?と少々心配。最初のほうは、まだ物語が動き出したばかりのせいもあるが、ちょっとぎこちない感じ。設定もこのままつっぱしっていけるのかとちょい思ってしまうような気恥ずかしさを感じてしまった。だが、それもちょっとの辛抱。読み進めてゆくうちにそんなことが気にならなくなるばかりか、後半は前半の話を存分に生かした盛り上がりを見せる。

さきのゴーシュが発見した少年は「ラグ・シーイング」といい、その少年の「配達先」は昔の知り合いが住む、山を越えた港町。配達依頼人は母親。その母親はラグの目の前で正体不明の黒衣の者たちに連れて行かれて、住んでいた家を焼き払われ、ラグは独りぼっちになってしまった。

その彼を配達の道中で遭遇するのは、旅人を襲う鎧虫(ガイチュウ)という危険な生物。それを倒すためにゴーシュが携帯しているのが自身の「こころ」の欠片を込めて打ち出す「心弾銃」だった。配達の過程で暴走が起こる心弾銃、ラグの左目に浮かび上がる赤い色をした精霊琥珀の義眼。精霊琥珀の義眼により力を増幅させた心弾銃の影響によって見えたのは、それぞれの「こころ」にある、遠く離れた肉親を想う気持ちだった。

ラグはゴーシュの思いを知って、ゴーシュと友達になりたいと思った。しかし、自分の仕事は「テガミ」を届けることであり、その中身には全くの興味がないと言い続けてきたゴーシュ。そんなこともありつつ、彼はラグをなんとか指定先であるキャンベルの港町に送りとどけた。

その町を立ち去る際、彼を見送りにきてくれたラグ。そこでゴーシュは、ラグをそっと抱きしめてあげた。「配達はおわったんだよ、ラグ……。きみはよくがんばった。本当によく乗り越えた。ぼくらは共に助け合い、危険な旅を終えたんだ…。」僕らはそう、友達になったんだと…。その瞬間、ラグは大粒の涙を流して、泣いた。

そして5年後、再びこの地を旅立とうとするラグの姿があった。そう……ゴーシュのような「テガミバチ」となるために。


ここまでが前半。後半は、その旅の途中にラグがある少女と出会うのだが、ここに前半のエピソードを含めたラグのココロの見せ方が非常にうまく作用している。人が心動かされる瞬間とは、他人(ヒト)のこころ*2に触れたときというテーゼが、この少女とのエピソードで増幅されて、より強力に伝わってくる。すばらしい。

駆け出し好調じゃないですか、ダーアサ。おみそれしました。ただ唯一心配の種なのが、この物語が雑誌のカラーとあんまあっていないんじゃないかと。ま、ホームベースだし、大丈夫か。続きが楽しみ。

あ、あと、今作は「イエー!!」な感じは少なめの方向らしい。

*1:一ファンの、好きであるがゆえの調子に乗った口調です。

*2:一応、変換違いは(kiaoのなかで)理由あり