輪舞曲を踊ろう。巻かれたネジが切れるまで、くるくると。

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

手脚をゆっくりと伸ばしてみる。そして自分がただの自分であり、どこにも含まれてなんかいないことを確かめる。 僕は何処にも含まれていない(原文傍点部) 。でも夢の中の感触を僕はまだ覚えている。そこでは僕が手を伸ばそうとすれば、それに呼応して僕を含んだ全体像が動く。水を利用した細かい仕掛けのからくりのように、ひとつひとつゆっくりと注意深く、段階ごとにほんの微かな音を立てながら、それは順番に反応していく。

最近、もっと一人になりたい願望がまたまた強くなって。でもなかなかそんなに一人になれなくて欲求不満に陥っていたそんな時、つい手元にあって読んでみたのが本書。今の自分の心境とマッチしてか、村上春樹の小説の主人公が持つ孤独感が、妙に気持いい。「羊をめぐる冒険」からつながりのある話らしいのだが、そちらのほうは未読。でも、上巻読み終わった時点で、物語を楽しむことにはほとんど支障なかった(4年前に何かがあったらしい、羊男というのに以前も出会ったようだが、そういことがあったぐらいの認識で済ませられる)。

いいなあ。話の方は、おおまかな流れがないようでいてやっぱりあって、なんとなく、でも少しずつすすんでゆく感じで、明言化が微妙に難しくて。でも、読んでいて雰囲気をけっこう楽しんでいる自分がいたりして。随所に、はっとするような文章も垣間見えるし。なんか、ずるずると(惰性ともちょっと違う)読み進めていってしまう。

ダンス・ダンス・ダンス」だなんて少し単純にすぎないか、と思ったタイトルだが、読んでみると逆にそんな滑稽なほど単純なのが、かえっていい気がするのは不思議。

「でも僕は何かを感じるんだよ。何かが僕と繋がろうとしている。だから夢の中で誰かが僕を求め、僕のために涙を流しているんだ。僕はきっと何かと結びつこうとしているんだろう(以下略…)

一人になる時間が欲しい。なんで一人になりたいのかといえば、自分の望むものと繋がりたいからだ。まだ体験していない本がたくさんあり、まだ対峙していない音楽があり、まだ出会っていない映画がある。それらは、時代も場所も越えて、自ら選択できる、濃縮された出会いだ。人と直接会うだけが出会いではない。それに、目の前の人間と話してみて、心が震えたなんてことが、今記憶にあるだけでもいいからすぐに思い出すことが(誰でもいいが)できるだろうか?もちろん真に価値ある対話が多くはないように、真に価値ある本や、音楽や、映画もそう多くはない。ただ、そんな本ばっか読んでいないで*1もっと人と会えよ、という想像力が足りない価値観はもっていないつもり(極端に走るのもよくないが)。ただ、もっと自分がしたいことをしたいのだ*2
ま、ぼーっともしたい。

*1:というほどkiaoは本を読んでいないが

*2:ただ、自分のしたいことだけしていても、世界はかえって広がらないことも、往々にしてあるけれど