登場人物名称が千葉県の市町村名ということはすぐわかった

エンブリヲ 1巻 (BEAM COMIX)

エンブリヲ 1巻 (BEAM COMIX)

エンブリヲ 2巻 (BEAM COMIX)

エンブリヲ 2巻 (BEAM COMIX)

エンブリヲ 3巻 (BEAM COMIX)

エンブリヲ 3巻 (BEAM COMIX)

小湊「というわけで『エンブリヲ』なわけなんですが。表紙がいいですよね。虫の女王というか。これこそ妖艶ってやつではないの?」
成田「なにが『というわけで』なのかがまずわからないんですけど…。それはともかく、バイオロジカルホラーと帯には題打っているけれど、看板に偽りなし。これはおもしろい。」
小湊「知らなかったけど、これ『アフタヌーン』で連載していたのね。一見マニアックなものをでっかく連載できるってのが、かつてのアフタヌーンのいいとこだったと思う。今は読んでいないのでわかりませんが。どうなんでしょ。」
成田「個人的には読んでいて『寄生獣』を思い出した。ネタ的にどうとかっていうんじゃなくて、さっき言ってたみたいに、一見マニアックに見えて、でもどんどん先に読ませるエネルギーみたいなものがあるというか。」
小湊「私的には『ナウシカ』と同じ部分を感じたなぁ。」
成田「虫出てくるしね。むしろ意識はしているでしょう。」
小湊「ところでこの作品には虫がいっぱいでてきますね。虫は好きですか?」
成田「見るのが?食べるのが?」
小湊「食べないよ!!へんな芸人じゃないんだし。」
成田「芸人じゃなくても食べる人は食べるよ。あなたが知らないだけだよ。」
小湊「…ま、いいや。この「生物ピラミッドの頂点だと驕っている人間に対して、突如自然が牙を向く」っていうのはよく用いられるテーマなんですけど、実際にこういうことって起こると思います?」
成田「まず、何を基準として評価したときに人間を頂点と見なすかが問題じゃないの?身体的能力では圧倒的に不利だし。」
小湊「支配性かなぁ?家畜や見世物として、こんなに他の種類の動物を管理下においているのは人間ぐらいでしょう。もしくは生息地域とか。これもこんないろんな環境に隈なく分布しているのは、他に類をみないでしょうし。」
成田「そんな他を圧倒するように支配している人間が、ある日突然自然の猛威に翻弄されるっていう恐怖を持つというのは、やはり身体能力に対する覆せない劣等感があるからなんだろうか。」
小湊「作家や漫画家の中にもいるもんね。お前明らかに文化系だろうってやつがマッチョを気取るのって。本当は知的に行きたいんだけど、いかんせん本当の頭のいい人に敵わなそうだとわかるやいなや、肉体的・暴力的なものに対する造詣を深めて、「所詮人間だって動物なんだから、力の前には頭の良し悪しなんて無力だよ」ってスタイルみせるヤツ。」
成田「ふーん。そうなの。ま、それはいいとして、生命の進化ってのは遺伝子の歴史とも言えるわけだ。生命は厳しい環境に順応するため、他の生物との生存競争の中で生き残るために、肉体的形質やライフスタイルを変えてきた。でも人間は個体としてはそんなに強い生命体とは、僕には思えない。」
小湊「何にも持たない、素っ裸の人は、そこらへんの動物よりも弱いと。」
成田「そう。だから人間となるべきその前の段階の生命体、いわばプレヒューマンとも言えるモノはなんとなく解っていたんじゃないのかな。塩基配列の交配ゲームによる競争には限界がある、と。だから彼らは他の生命体と違う進化の方法を編み出した。それがミームと呼ばれるモノなんだと思う。」
小湊「ミームって?」
成田「謂わば『文化的遺伝子』と言えるもので、簡単にいえば文化が複製され伝播される仕組みを生物学の仕組みを利用して説明した概念のこと。実際にそれは本当にあるわけじゃないけど、僕はこの考えがけっこうおもしろいと思うし、個体として明らかに弱い人類がこの世界をこんなにも支配しているわけが、このミームというもう一つの遺伝子を用いることでうまいこと説明できるんじゃないかと思えるんだ。」
小湊「そう考えると、人類という今んとこ暫定的生命体チャンピオンを倒すためには、人類がミームを発達させたように、別のナントカ的遺伝子を発達させたそれがでてくることが考えられるのかなぁ。」
成田「それを進化と呼ぶかどうかは我々にはわからない。そもそも進化なんて呼んでいるのは、人間側の都合でしかないから」
小湊「地球外の生命体が人類を一掃する可能性もわからんし。」
成田「もしくは、地球上であっても人類とは別の次元で生きている者とか。イーガンの小説に出てきた『オルタナティヴ数学から生じる高次レベルの規則の一群に従う』それら、みたいにね。」