停滞の星・火星(アクア)

ARIA(12) (BLADE COMICS)

ARIA(12) (BLADE COMICS)

ARIAが描いているこの火星(アクア)、特に限定してネオヴェネチアというのは誰もが夢見たことのある桃源郷だったわけで。この夢の話もとうとう終わりを迎える時が来てしまった(別に火星が破壊されたわけではないが…)。

脊椎動物で初めて陸上にあがって移動したのが最古の両生類だとすれば、およそ四億年前のことである。この系統の生物で初めて空を飛んだのは鳥である。(…中略…)(引用者注・その出現は)おおよそ一億数千万年前であろう。遺伝子の<乗り物>としての脊椎動物は、陸上移動から空中飛行までに二億六〇〇〇万年以上を費やしている。
ところが人間の脳は、圧倒的に変化の速度が速い。(…中略…)(引用者注・自動車の発明から飛行機の発明まで)その間わずか、一三四年。遺伝子が二億六〇〇〇万年かかった過程を、脳は一三〇年強でなし遂げてしまったのだ。二〇〇万倍の猛スピード。

佐倉統遺伝子VSミーム

<星間旅行ができる>ほど文明が発達したこのARIAの時代では、地球(マンホーム)は<街はどこも美観化と合理化が進んでいてスッキリし>ているらしく、それとは対をなすようにネオ・ヴェネチア<わざわざ船でうんとこさやんなきゃ始ま>らないように、意図的に文明を留めている。
人はどこか、この眼を見張るような文明が進歩してゆく速度に恐れを抱いているのかもしれない。「今のままでもしばらくは十分なのに…」と人は思っていても、文明のほうがそれを許さない。「足踏みなんかしていられないよ」とでも言っているかのように、まるで何かに追いつかれるのを恐れるかのように。

(…中略…)知能を増強することで期待される効果は、何もテストの成績の上昇や出世だけではないからです。記憶力がよくなれば、その分、勉学や仕事に割く時間が少なくてすみます。そうなれば、余った時間を利用して、友達と遊んだり、自分の趣味に打ち込んだり、家族サービスをしたりと、人の心にまでゆとりが生まれてくるのです。

池谷裕二記憶力を強くする

人はいつも文明を発展させてきた、豊かに生きることができるようにと。機械を発明したのだって、その根底には労働を機械に負わせ、人を労働から解放するという理念があったはずだ。
だが産業革命しかり、モノを大量に生産できるようになると、それを維持するためには人の手がかかるようになる。時間が金銭に換算されるようになる。以前の2/1の時間でモノを作れるようになると、今までの時間で2倍のモノを造ることが当たり前になってくる。このままでは、他に出し抜かれてしまう。もっと少ない時間でさらに生産するには…。


モノは豊かになった。けど、人の心は?

昔なら、一日がかりでシナリオ一つできれば御の字。ところがコンピュータが入って、それが前提整理さえされていれば1時間ほどでできるようになってしまった。というわけで、情報処理の効率は、まあ20倍になった。しかしそれによって、意志決定の効率や精度が20倍になったか?なっていないのだ。(…中略…)
結局のところ、人は腹を決めるための時間が必要なのだ。(…中略…)
すなわち、情報処理によって意思決定が加速されるには限界があるのだ。
山形浩生新教養主義宣言

文明がどんな段階になっていようと、人は生まれたら、その時点で一から積み上げていかなければならない。人間には限界がある。文明は幾百年もかけてカスタマイズされていくけれど、人間は生まれて死ぬまでまあだいたい80年ぐらいで、はい終わり。他の人には受け継がない。一人ひとりがまた一から始めてゆく。


だから残したいのだ。また誰かが一から生を始めるときに、目の前にそれが存在しているように、私と同じようにそれに触れることができるように。
火星(アクア)に存在する水の妖精の物語。彼女が感じたその心の揺れは、いつか誰かが感じた心の揺れ、そしていつか誰かが感じる心の揺れと同じ形をしているのかも…。

ちょっとうれしいだけだよ。


追伸


で、電波きたァーーーー!!


って、思っちゃいかんのね(笑)。いや、だってこれは誰もが気にはなっていた問題でしょ。まーkiaoは無難に地球(マンホーム)に住む恋人に送っているものだと思っていたんだでけど…。でも、そーいうことだったにしては文面がやたら具体的というか…