しかし友情は…
- 作者: G.K.チェスタトン,中村保男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1977/09
- メディア: 文庫
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でもって、やっぱりチェスタトンはいい。文章が丹精で、気の利いた筋となによりユーモアを持ち合わせているから。だからチェスタトンの作品は少しずつ〃読んでいこうと思っていた。けれど、最近少しずつ考えが変わってきている。
ただでさえ本を読むペースが遅いのに、かつ、ものによっては再読することにしようと考えたら、もうそんなにもったいぶることもないかな、と。評論集とかもあるし*2。
その名のとおり、この小説には魅力的な逆説が多く収録されているけれど、さっき読んでいた部分にはまっすぐな文句があったので、ここに。
「恋は時間を要しない。しかし友情は常に時間を必要とする。夜半過ぎにも及ぶ多くの時間を」
そう、友情には時間が必要なのだ。恋には、本能のせいなのか勘違いのせいなのか知らないが、瞬間風速的な一瞬にして落ちてしまう恋というものがある。だが、友情にそんな突発的なものは起こらない。
君子一歩外に出れば7人の敵が〜(だったっけ?)ともいうように、人間なんて言うものは基本的には他人を警戒するものだから。オレは初対面の人間ともすぐに仲良くなれるよ、なんて言う人がいるだろうけれど、それだってそのほうが敵を作らなくていいという人間の生きていく上での知恵だもの。でもそれは友情じゃない。
人と人との関係って、慣性の法則に似ている部分があると思う。
<静止している質点は、力を加えられない限り、静止を続ける。運動している質点は、力を加えられない限り、等速直線運動を続ける。>
時間をかけて出来上がった友情は、例えお互い密に関わり合うことが少なくなっても、その思いが薄くなることはない。ただ、静止している二人の関係に力を加えて、安定的な運動を起こすまでには、やはり時間がかかるのだ。
質量の小さい物質は、簡単に加速することができる。が、外の力によってこれも簡単に失ってしまう。逆に質量の大きい物質は、加速するために大きな力を必要とする。けれどいったん運動を起こすことができたならば、その運動は簡単には外の力に屈しない。
友情にも時間という大きな力が必要だ。時間を必要としない友情なんてものは、やはりそれなりでしかないということか*3。