麦の穂をゆらす風

 人は、目の前にある道に霞がかかり、どこへ行こうとしていたのかも、どこへ行くのかも見失いそうになろうとも、決して歩みを止めることは許されません。ましてや、後戻りをすることなど。ならばせめて、己が信じたものを、それだけでも手放さぬために、前へ進み続けるしかないのです。例えそれが、永遠に消えることのない涙の瑕疵を心に残そうと……。


 デミアンとテディ、彼ら弟と兄に投げかけられた「代わろうか?」という台詞。それを振り切る彼らの意志。デミアンがシネードに、クリスの母親から「二度と顔を見せないで」と言われたと語る。そして後々に全く同じ台詞が、シネードの口からこぼれ落ちる。ここにおいて、「戦争が起こる度に繰り返される哀しみ」というテーマが観ている者に提示され、本作の幕は閉じられます。本当に、それ以外は考えられないほどの、終幕の場面。


 愛していた者を失う哀しみ。犠牲となった仲間たちの意志を無為にしないための決断。


 兄弟二人が最後に映し出される約4分30秒間。この静寂へと導いた引金が、私たちに問いかけるのです。デミアンがダンに語られた言葉の答えを……。

 誰と戦うかは簡単にわかる
 何のために戦うかよく考えろ